八光自動車京都 | 2013.05
敷地概要 所在地: 京都市 敷地面積: 1,059m2 建物概要 建物用途: 展示場、整備工場 構造・規模: S造 延べ床面積: 1,836m2 Webpage e-architect
クラウド・コンピューティングが進んだ今、私たちは実際に物に触れなくともそれを知ることができます。 有り余る情報の中、キーワードを検索エンジンに提示すると、求める情報を即座に得ることができます。 クラウドの中で人々は既に品定めをしています。最後に欲しい情報に、バーチャルではなくダイレクトに触れる。 そういう特化した場所を人々は欲しています。 車の魅力を高めるための特別な空間として、ショーケースが持つ心理的作用を用いました。ショーウインドーの ガラス越しに展示される商品を見ることはできても、それに直に触れることはできません。ショールーム内部の 商品は、特化された存在になり、価値が与えられます。透明な層は、意識的にこちら側と向こう側の差異を強く 意識させる結界になります。一方、半透明な層は、内側と外側をつなぐフィルターとして作用します。人々は “むこう側”の雰囲気を感じるだけなので、想像力を働かせる必要があります。これにより“むこう側”の 世界との意識の接続が促されます。透明と半透明の重層により、ショールームに奥行を与えます。 以前のこの敷地には地下立体駐車場(深さ20m)をもつホテルがありました。一方、東側には墓地があり、 その地盤は敷地よりも5mも高く、既存の建物がその土圧を受けていました。オーバーハングするBOXを 配置する形で、これらと整合する計画を進めました。 京都の厳格な景観規制の下、周囲の環境に溶け込む現代の建築を作ることを考えました。ファサードは白川通の 街路樹に溶け込むことを意図しています。緑の中で積層する、水平に分節されたレイヤーの構成とします。 グレーのパネルとガラスの帯のレイヤーは、周辺の建物や山並みが醸す水平の志向性に溶け合い、緑の中へ 消えていきます。日本の街並が持つ水平要素を強く意識し、建築のボリュームを街に馴染ませます。 また、京都の伝統と、展示車の未来の対比を意識しています。マッシブに、しかし透過する宙に浮いたBOXの 中に、有機的な空間を包み込みます。ショールームの2階ギャラリーの薄い床は宙に浮遊しながら、1階まで スロープダウンします。自由曲線で構成されるオーガニックな未来的な展示スペースをそこに創りだします。 借景として街路樹のグリーンを室内に取り入れます。ショールームを訪れた人はグリーンの背景の中で車を選び、 商談し、車を整備します。自然の風が流れる整備工場では緑の中で車が整備され、オーナーは自分の車がケア される満足感を感じます。 お地蔵様も大切にケアされています。クラウドの中で人々は既に品定めをしています。 最後に欲しい情報に、バーチャルではなくダイレクトに触れる。そういう特化した場所を人々は欲しています。