滝野のアトリエ | 2003.04
敷地概要 敷地概要: 兵庫県加東郡 工事種別: 改修 建物概要 建物用途: 住宅 構造・規模: 木造 延べ床面積: 91m2 掲載誌 2003 日経アーキテクチュア 7-21 2004 新建築 03 賞 2002 カナダグリーンデザインコンペ 入選 2003 兵庫県人間サイズのまちづくり賞 受賞 2003 関西電力住まいの設計コンテスト 入選 2004 木質空間デザインコンテスト 入選
民家の土間と味噌蔵はほとんど使われることもなく、内部は真っ暗でした。朽ち果てた印象を受けると同時に、 この建物を改修してもどうにかなるのか?そしてこの建物を改修する意味があるのか?またそれが可能なのかと の疑問を抱いたことを覚えています。明治時代に建てられた母屋は確かに柱も梁も太く、独特の雰囲気を 持っています。 しかし二次部材である垂木や床組みは、かなり痛みが進行している部分もあり、正直これを触るのは怖いと 思いました。特に味噌蔵の部分は傷みが激しく、残せるのは主要構造部の骨組ぐらいでなかろうかとの印象 です。それでも何故、建築主はこれらの建物を残したいのか?明治時代の母屋と味噌蔵、大正時代の擬似洋館の 診療所、昭和初期の土蔵。それぞれ作られた時期も個性も違う建物たちが、小さな中庭を囲むような形で軒を 連ねています。 足の踏み場もないような中庭に立つと、壊して作りかえるのは簡単だけどこの雰囲気を残して、新しく空間を 作り出すことにも意義があるかなあと漠然と思ったものです。各部のディテールのアウトラインを確定させ、 同時に構造の裏付けもとって現場に着手することとなります。味噌蔵の部分には井戸がありましたが、これも 残して、再生することとしました。迷信と言われるかもしれませんが、着工時には井戸のお払いも済ませ、 中庭の散水用として今も現役です。 古い建物だけに何か命が宿っているような気がしたので、ちゃんと敬意をもって建物に接し、そして新しい姿に 生まれ変わらせないと、罰があたるように思えたのです。百年近くたった建物にはそれだけの迫力があります。 古今が融合した建物は新鮮で訪れたものに感動を与えます。設計者である私も同様にここに行くとワクワク します。これは新しい創造であると考えています。