熊野古道センター | 2003.10
敷地概要 計画地: 熊野古道、日本 建物概要 建物用途: パビリオン 延べ床面積: 2,400m2
T透かしの社・杜の透かし 曖昧に交わり・重なる二つの領域 “地”を本来の斜面の形状に戻し、そこに“図”である細長い建物を等高線の一部を担うが如く配置します。建物の 一部は二つの領域の力に引かれ、折れ曲がり、鋭角となった部分は傾斜地に突き刺さります。ここが映像ホール です。石畳の堀割を通ってのアプローチは一本のあぜ道へと連なり上部の棚田へも人々を導きます。この掘割で 建物は二分され、3.6m巾のスリットが建物を貫き、背後の景色が建物前面に浸透してきます。堀割を 上がって振り返ると、そこには切り取られた尾鷲の街並みが遠望でき、軒下の入口へといざなわれます。 軒下スペースから左に折れると、情報発信機能と交流機能が連なるエリアのエントランス、逆に右に折れ スロープを下って行くと展示スペースのエントランス、さらに下ると階下の図書スペースへとつながって 行きます。この軒下スペースとスロープからなる空間は、谷を挟んだうっそうとする杜に人々の視線を 釘づけにし、そこに自然との対峙を感じさせます。しかし、スロープから谷の小道へと散策を進めれば、 小川が流れ、小道はやがて小さな滝にたどりつきます。自然と交わり・重なり一体化していきます。 図書スペースなどの研究者ゾーンは、敷地の高低差を利用し、眺望・採光とも良好な地上階となります。 また、ハンディキャッパーもこのスロープあるいは工房前のスロープを使って建物にアクセスします。 スロープ前まで自動車での寄り付きが可能です。 空間は二つの片流れ屋根の木造架構が重なり交じりあい、細長く連続していきます。軒下に切り取られた山の 景色、海の景色は印象的に視覚にうったえます。二つの架構は段々とずれていきそのひずみが屋根の ハイサイドライトとなり、光や景色を建物の中に取り入れます。同時に架構が交じり合う部分は建物の中で 帯状にうねり、樹木に囲まれた道のような動線となります。地盤の起伏に合せ上下する床とあいまって、 継続的に変化する空間。大規模な木造建築物となりますが、掘割上部のスリットで建物を大きく区画します。 また、収蔵スペース下の研究者ゾーンは耐火構造、映像ホールと付属するトイレも大屋根の下に入れ子状に 耐火構造で形成すると同時にそれぞれ独立の避難経路を確保し、1000㎡区画を実施します。