おおい町チャレンジショップ(SEE SEA PARK) | 2022.07
敷地概要 所在地: おおい町、福井県 敷地面積:10798.3m2 建物概要 建物用途: チャレンジショップ 構造・規模: S造 延べ床面積:2740.6m2 掲載誌 2022 GA JAPAN 178 2022 新建築2022年12月号 2023 商店建築2023年1月号 2023 C3 Korea no.427 2024 DOMUS 1087 賞 2023 One of the most beautiful shopping mall by Prix Versailles 2023 World Architecture Festival Best Use on Natural Light Webpage Archdaily Domusweb
2019年の夏の終わり、ヒグラシが奏でるカナカナという心地よい音のなか、おおい町を訪れた。敷地は整備された臨海 埋立地にあり、海から山へとつながる空間のフローの過程にある。暖かくしかし粘度を感じる、柔らかく、優しい空気 が身にまとわりついていた。人が集い、居心地のよい環境を創ることを考えた。新規創業や新事業展開に挑戦する場と なる「チャレンジショップ等」を整備することとプロポーザルの要綱にあった。人を誘うことが重要であるが、建築の 形や意匠が目を引くということ、すなわち固定的な独特な個性を建築に与えるということではなく、均質的な空間単位 を集合させ濃度差を作ることにより、秩序の中に多様性を生み出す。集落に民家が必然のように集まり地形と共に魅力 的な空間濃度を作り出すようなそんな印象的ではあるが飽きのこない人々の営みに馴染んだ場所ができたらと感じた。 建物は太陽エネルギーを吸収し蓄え、ときに熱を放出する。また、大地の温熱環境と同期し、上層に空気を抱くユニッ トが漂う。民家にかつてあった土間やとおり庭の雰囲気が現代に軽やかに再現される。熱容量が大きい瓦屋根や空気を 抱く茅や葦の葺き屋根に代わりここでは透明なETFE(フッ素樹脂フィルム)に覆われた空気塊の集積がダウンジャケッ トのように外部とエネルギーの交換を行い下層の内部環境を安定化する。杉板ルーバーのスリットからなる構造プリズ ムによって太陽光は屋内に拡散し円やかな光で内部環境を満たす。高断熱、高気密な壁体で外部と隔絶した環境を機械 設備でコントロールする従来の省エネの考えではなく、自然環境そして周囲の文化へとつながる開放型の穏やかな環境 コントロールを目指す。ユニットは空気を抱く基本構成だが、同時に大空間を支えるどこまでも拡張増殖していくフレ キシブルなトラスのような構成単位でもある。どこまでもつながっていくが、その下には多様な人々の営みが花開く。 家としてのメタファーも構成にとりいれ、開かれた親しみを感じる空間をそこに創ることを意図する。 超立方体に近い4.8m角、高さ2.4mのキューブがスチールシリンダーをコアとしてユニットの単位を創る。ツリーと呼 ぶ2.4m角平面の櫓が枝のように延びるトラスによりユニットを支える。ユニットはアーチ状に連続し、下部空間の質 により、高低差を与えていくが、同時に背後に控える山々の地形と呼応するような空間の質の変化を作ることを意図し ている。おおい町整備のWEST棟と同商工会整備のEAST棟、合わせて72のユニットと15のツリーの集合からなる屋根と、 ETFEからなるトップライトが織り重なり、ランダムな幾何学模様を創る。屋根は当初3.2mmの鉄板に遮熱塗料と断熱 材を吹き付ける仕様としていたが、施工者の提案により超強力伸縮型塗膜防水を採用することとなる。これがETFE膜と 一体化しモノコックな膜面が屋根面全体を覆うことになる。ETFEは断熱性能はほとんど0であるがユニットに溜まった 熱を放熱する役割も担う。ダウンジャケットでも羽毛=空気塊を包む外皮はとても薄いが、外皮を通してエネルギーは 呼吸している。