東亞合成水素ステーション徳島 | 2022.05
敷地概要 所在地: 徳島市 敷地面積: 2095m2 建物概要 建物用途: 水素ステーション 構造・規模: S造 延べ床面積: 471m2 掲載誌 2022 GA JAPAN 178
あるがままの雲塊 雲のように宙に浮く気積の集合体を定着させました。気積は空気を抱え、温暖化により激しく変化していく地球環境 の緩衝材として下部の環境を中和します。そして、それは儚い自然を大切にしないといけないという意識の視覚化で もあります。ツリーとユニットと呼ぶ構造システムにより雲は形成されますが、それは宙に浮くと同時にどこまでも 連続する雲塊を形成し、多様な空間を作り出すシステムとして作られます。あるがままに形作られたスペースフレー ムのようなものですが、画一化された連続ではなく、動き変化するそういうつながりが、関係性が作られる。この多 様に連続していく構成を考えるに際して私達は思索を重ね、結果。4次元超立方体を基本構造とするユニットがツリ ーの回りに風車のごとく旋回する一つの基本構成を創りました。その基本構成がどこまでもつながりの位相を変えな がら、環境との接触のあり方を多様化し、人の五感に与える様々な刺激を作り出し変位しながら連続していく。やや こしいですが、こういう一つのオーダーを創造しました。しかし、私たちは数学者ではないのでこれを発見すること が目的ではなく、実際にはこのオーダーを宙に浮かせ、如何にその下の人々が織りなすフローをやさしく抱擁するの か。サステナビリティを考えながら、空間を覆いそこに人々の居場所を見出していくことが、建築家の役割だと認識 しています。 雲のようなオーダーは、儚い自然を大切にとの思いを伝えるメタファーとしても人に感じさせますし、働きます。自 然と人の営みがあっての緩衝材ですから、よりその意図を世界に街に知らせるため、雲の下にはさらに意味を人に伝 えるものが設定されます。水素ステーションでは街を照らすランプシェードが付加され、街の灯として行燈のごとく 光を放ち、そして自然を意識した緑・グリーンと空・ブルーに発色し時間が移ろいます。未来へとつながる時間軸も 感じて欲しい。シェードは薄い鋼板を吊り下げただけの簡素なつくりのものですが周辺に与える意味はとても印象的 なものとなります。あるがままの構成がそのまま見える集積ですが、意味を発するときそれらは融合します。 構成を考えることが主題ではなく、如何にその下に人々の営みのフローを包み込むかが私たちのテーマです。この雲 塊はどこにでも形を変え発展していきますし、また違った形でサステナビリティを表現します。変容する多様を表す 雲によって自然と人とそして未来をつなぎきます。大それた考えかもしれませんが、これはリアルです。