藤田珈琲 | 2020.11
敷地概要 所在地: 東大阪 敷地面積: 826m2 建物概要 建物用途: カフェ,住宅 構造・規模: S造・3F 延べ床面積: 730m2 掲載誌 2021 新建築 8 2022.01 商店建築 2022 GA JAPAN 178 Webpage Archdaily
人を曳きつけ螺旋上に巻き込み昇華する、そんな建築を目指した。 下町の構造が集積する東大阪市内、かつては貨物線であった高架線路の際に位置する。 人の営み行為、生活が混沌と交わるそんな艶めかしい街中に珈琲焙煎機を中心とし、その周辺を人のフローが巻き上が るプランを創り上げた。建物中心の四角いコアにはパン焼き工房やカフェのカウンターも鎮座し生産の場となる。それ を求めにやってくる顧客や従業員、あるいは引き寄せられた周辺に住まい働く人々がコアにまとわりつき上昇する。建 物は透明化され渦巻くスロープや生産のコアが視覚化し、機能や人々のフローが周辺に意味を発する。一度この渦巻き を見たものを建物内に誘引する。 竣工後半年が過ぎたが、顧客の入りは予想以上のオーダーで推移している。これといった宣伝をクライアントも施して いるわけでもなく、看板すら表に出していないが、機能や人の生業、行為が露出する建物は自ずと人を曳きつける。建 築であるかどうかはぎりぎりの存在であり、竣工後しばらく、建物を見守ってきたが、今もその場所で渦巻いている。 機能や人のフローと同様に環境のフローということも強く意識している。ガラスを透過し進入した太陽光線はスロープ 部の床と気積を熱し、上昇気流を作り出す。涼しい外気が地表に作られコアの地窓から侵入し、建物内の吹き抜けを勢 いよく上昇し、換気窓とコア最上部の可動窓から排出される。常に、建物内と外気の間での循環がおこる仕掛けを作っ ている。太陽光線は室内環境を熱くブレークするものではなく、空気を循環し、自然な換気を促すエンジンとなる。冬 季は太陽高度が低く、特に太陽光線の受容が大きくなり、スロープの南側は温室状態となり、換気窓を開放すると窓上 に蜃気楼が舞うほど空気を温めることとなる。竣工後半年が経過し、建物全体の自然環境の整え方をクライアントにも 学んでもらっている。 コストとスケジュールのフローということも強く働く建築である。仕事を請け負った施工者はとにかく廉価な見積を提 示するクライアント紹介の建設会社だった。熱意はあってもゼネコンのような建築技術があるかは難しい。なので、そ の熱意をもってして、多少設計図通りに仕事ができなくても現場で大丈夫なように修正し仕事を進めるという手法を とった。施工者ができるという方法で設計を練り直し、図面も何度も書き直したが、それに見合う施工図がでてくるか というと、そうでもない。それでも施工者はやる気はある。施工途中からは設計図通りの厳格なディテールを強要する ことの意味のなさを痛感し、逆に現場に合わせてものごとを組み立てることをよしとした。厳密すぎるものの成就は この流れるような建築を創る手法としては摩擦が大きすぎる。現場で強いられる今回の作り方だからこそNaked Spiral が成立すると考えた。当然ディテールは厳格ではないが多様性が全体のまとまりやフローをつくるそんな建築となって いる。それでも、絶対的な性能を確保するように、現場には通い、その場でサッシ内の未塗装箇所やシールの欠落など 目に目えないところのチェックを繰り返した。 建築というより、混沌とした、あらゆる事象や意味、ひとびとの思いや行為からなる多様性が 渦巻き、巻き込むコアが街の中に舞い降りた。 ArchDailyにて藤田珈琲が掲載されています。 以下よりぜひご高覧ください。 藤田珈琲が"the ArchDaily 2022 Building of the Year AwardsArchDaily"にノミネートされました。 よろしければ以下より投票をお願いいたします。