銀沙灘 | 2007.12
敷地概要 所在地: 和歌山県和歌山市 敷地面積: 580m2 建物概要 建物用途: 専用住宅 構造・規模: RC造 延べ床面積: 330m2 Webpage OpenBuildings
建築を作る上での手がかりとは敷地のコンテクストを読み取り、その上で周辺環境に対してある一定の レスポンスを示した造形・プラニングを提案することと教えられ、考えてきた。しかし、今の時代、周辺環境 とはどこまでも見透かされた時空の、僅かに切り取られた一部に過ぎない。故に、その場限りの場所性に こだわった回答も余り意味をなさず、本当の意味でのインターナショナル(インタートポス)なシステムを 作りだすことに力点が置かれているように思う。 敷地は、碁盤目状の巾広い道路でゆったりと区画され、良好な住環境が展開しています。逆に、手がかりとなる 土地の個性というものは希薄であり、平坦な200坪の敷地にどのような形で住宅を作るか思案しました。周辺 環境から授かるテキストが希薄なだけに、建築に従属する外部(領域)を敷地内に新たに形成し、周辺環境から 切り取られた小宇宙を展開します。ただし、周辺と隔絶したインナーコート型の計画ではなく、領域が上空に 抜けていくような、手のひらで水をすくうような空間の切り取り方を図りました。 建築主の要望はいくつかの単語(キーワード)に集約されるものです。クライアントは、コンクリート打放しの 家が欲しい。庭に池(水盤)が欲しい。ジャグジーが欲しい。外部から見えないアプローチが欲しい。と 言いました。もちろんそれらの単語を具象化するだけでは、設計者は必要ないので、言葉にこめられた意図を 読み取ります。 コンクリート打放しが好きだという言葉に我々設計者が感じる意味は、コンクリートのマチュエールにあると 思います。しかし、一般的に事象を分解しては考えず、過去に体感した著名な建築物が物語る空間性とも一体と なり、建築主は「打放しコンクリート」というものを認識しています。その中で、コンクリートの素材感という ものは、もはや喪失し、近視眼で見たときの仕上がりの良し悪しにとてもこだわります。発注者としては当然の こだわりですが、コンクリートの素面に張り付いた意味を再度自分に問い直す機会になりました。当たり前の ことですが、コンクリート打放面は仕上がっていないのです。仕上るのは、それを感じる者の「認識」 なんだと。故に空間性がそれだけしっかりしないとコンクリートは仕上がらない。